高性能化が進むAT
車のトランスミッションには大きく分けてMT・AT・CVTの3種類がありますが、国内の自動車の多くがAT車となっています。
運転が簡単なAT車ですが、近年では多段化が進みセミオートマなども登場しています。
MTが当たり前だった高性能スポーツカーやレーシングカーでさえオートマチックのミッションを採用しているほどです。
クラッチ操作が不要で運転が簡単なAT車
MT車はクラッチ操作が必要で、渋滞やストップ&ゴーが多い日本の道路事情では、ドライバーが疲れやすいなどのデメリットがあります。
しかしクラッチとギア操作をなくしたAT車は、免許取り立ての初心者からベテランまで同じように運転することができます。運転免許にもAT限定免許があるほどで、現在では新規取得者の半数以上がAT限定免許を選んでいます。
AT車のメリット・デメリットとは
AT車のメリットは繊細なクラッチ操作と頻繁なギアシフトから解放されることです。
運転が簡単なAT車ですが、片手や片足だけで運転することができ、改造を施せば手だけでの運転が可能になるなど体が不自由な人でも車を操れるというメリットがあります。
機構的に大排気量、ハイパワー車との相性が良いので軽自動車から大型トレーラーまで全ての車両に対応できます。
AT車のデメリットはMT車やCVT車と比較して燃費が悪くなる点です。
トルクコンバータというオイルの粘性を利用した流体クラッチを介して動力を伝達するために、どうしても駆動ロスが発生してしまうからです。
安価なAT車は変速段数が少ないために変速するときのショックが大きく、乗り心地が悪くなりがちです。
しかし最近では電子制御によるギアの選択や8速、9速といった多段化が進み、高級車の世界ではAT車のデメリットが全く感じられないほどまで進化しています。
CVT車との違いは
AT車はギアの組み合わせにより変速するので4速や5速といった段数があるのに対し、CVTはギアを使わず2つのV字プーリーの直径を変化させて伝達比率を変えるので無段階変速となっています。
AT車がエンジンの回転数とギア比を変化させて速度を調整するのに対し、CVT車はエンジンの回転をある程度まで上げれば回転数を変化させなくてもCVTが最適なギア比を選び、速度を調整します。
CVT車はその構造上、エンジンが高回転になったり大パワーが加わるとベルトがスリップしてしまいます。
そのためスポーツカーや大排気量エンジンを搭載する車には不向きと言われており、コンパクトカーや軽自動車などの小排気量エンジンを搭載する車を中心に採用されています。
反対にAT車はMT車と同じようにギアの組み合わせで動力を伝達することから大排気量エンジン、ハイパワー車との相性が良い変速機です。
参考記事:CVT車のメリット・デメリット【AT・MTと燃費や性能が違うのか】
AT車を運転するときの注意点
クラッチ操作と頻繁なギアシフトが不要で運転が簡単なAT車ですが、操作が簡単が故に操作ミスを犯しやすいので注意が必要です。
AT車で深刻な事故に繋がるミスがアクセルとブレーキの踏み間違いです。
右足で2つのペダルを交互に操作する点はAT車、MT車共に共通していますが、MT車の場合は左足でクラッチを踏めば駆動がカットされることを体が覚えているのであまり大きな事故には繋がっていないようです。
AT車が登場した当初から踏み間違い事故の問題はあったはずですが、自動車メーカーが根本的な解決策を講じないままAT車の販売台数を伸ばしてきたのには疑問を感じてしまいます。
私自身はAT車(2ペダル車)を運転するときは右足でアクセル、左足でブレーキを操作しています。レーシングカーやレーシングカートでは当たり前の操作法ですが、踏みかえないので踏み間違いの事故は起きません。
AT車は長い下り坂などでエンジンブレーキが効きにくいので、フットブレーキがフェードやベーパーロックを起こしやすい点にも気を付けましょう。
長い下り坂などでは2レンジやLレンジに入れて速度を調整するようにしてフットブレーキの負担を減らし、フェードやベーパーロックを防止しましょう。
参考記事:下り坂ではブレーキの踏み過ぎ・酷使に注意【フェード・ベーパーロック】
ギアを自由に選択できるのがMT車の面白味でしたが、セミオートマやパドルシフトの登場によりスポーツカーでもAT車を選ぶ人が増えています。
今後もAT車が占める割合が増えることが予想されますが、簡単操作にあぐらをかかず慎重な運転を心がけていきましょう。
MT車の割合が極端に減少した昨今では、AT車の怖さやデメリットを体で理解している人が少ないのかもしれません。操作が簡単だからこそミスを犯したときにはパニックを起こしやすくなってしまいます。AT車を運転するときにはその特性を充分に理解しておきましょう。