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「なんとなく良さそう」「得しそう」でハイブリッドカーを選んでいませんか?
トヨタ自動車がハイブリッドカープリウスを発表してから15年以上経ち、メーカー各社がこぞってハイブリッドカーを出しています。
でもこのハイブリッドカーが好まれる現象は「日本だけ」だとご存知ですか?
欧州やアメリカでは、ハイブリッドよりもクリーンディーゼルや電気自動車の開発にシフトしています。
なぜハイブリッドカーは日本で売れるのか、またハイブリッドカーは本当に家計にとって得なのか、エコカーなのかを考えていきたいと思います。
いくら燃費が良いといっても、クルマの価格差ほど元が取れるものなのでしょうか。
人気のハイブリッドカー、でもなぜかアリオンが売れた
私がカーディーラーの営業をしていた頃、トヨタ自動車では3代目プリウスのマイナーチェンジが終わりアクアを出しました。私が普通のガソリンエンジン車に乗っていたのを、3代目プリウスの後期型に乗り換えた頃です。
その燃費の良さには感激しましたね。年間5000キロ以上走行する私にとって、リッター20キロ以上走るプリウスは奇跡のクルマにも思えました。
仲間の営業マンも、売れるハイブリッドを大量に販売していましたが、その頃私が一番売っていたクルマはエコカーではない「アリオン」です。
もちろんプリウスも売っていましたが、プリウスを買いに来るお客さんは、最後にはアリオンを契約していきます。
なぜか、その理由は走行距離にあります。
ランニングコストで計算するのではなく「総支出」で計算すべき
ここから少し数字の話になります。現行のアリオンの1.8リッターモデル(グレードはA18Gパッケージ)の車両本体価格は2,239,527円。
現行プリウス(グレードはA)の車両本体価格は2,777,563円です。2台の車両価格差は538,036円となります。
この差がどれだけ埋まるのかを考えていきます。
まず、車両購入の際のエコカー減税で、プリウスは自動車取得税が減免です。約15万円ほどの減免となります。そうすると2台の価格差は45万円程度になります。
次に燃費です。アリオンの実質燃費をリッター12キロ、プリウスの実質燃費をリッター22キロとして算出しましょう。
10,000キロを走行するのに必要なガソリンは、アリオンが833リットル、プリウスは454リットルです。
現在のレギュラーガソリンの小売価格は150円ほどなので、
アリオン=833✕150=124,950円
プリウス=454✕150=68,100円
となります。差額は56,850円です。
先程の車両本体価格の差額で割ってみると、
46万÷56,850=8.09
つまり、年間走行距離が10,000キロのユーザーが8年乗り続けて、やっと差額をペイできます。
ランニングコストは圧倒的にプリウスの方が安くなります。
しかしクルマを買ったところから手放すまでの支出をトータルで考えると、保有が8年を超えてなおかつ、80,000キロの走行距離を超えないと、プリウスのほうが得にはならないということがわかります。
実際に自分の欲しいグレード、欲しい装備をつけて計算することによりトータルでかかる金額決まります。
全ての人がハイブリッドカーでお得になるわけじゃない
実際はそんなに走らない、そんなに長くも使わない
現在私が保有するプリウスは、初度登録から5年半が経過し、走行距離は10万キロを超えました。
これだけかよく走る使い方だと、当時アリオンを買っているよりは遥かにプリウスの方が経済的だということになります。しかしここまで走るユーザーさんが日本の中にどれだけいるでしょうか。
大体の方は、年間走行距離が6,000キロ程度、クルマの保有年数も5年程度となります。仮に7年乗ったとしても、走行距離は5万キロ程度です。
これでは、ほんとうの意味でのエコ(お金の面だけで考えるエコ)とは言えませんね。
ディーラーはハイブリッドカーを売りたい
もちろんディーラー側や営業マンサイドとしては、車両金額の高いクルマを売ったほうが利益は多くなります。
「プリウス買いに来ました」という人に、わざわざこの話をすることもないので、そのままプリウスを売ってしまうでしょう。
でも、このハイブリッドのカラクリをしっかりと説明してくれる営業マンのほうが信頼できるし、いざというとき頼りになります。それだけの知識をもち、お客様の求める最適を提案できるからです。
もちろんプリウスがどうしても欲しいのに、アリオンを買う必要はありません。ただ、クルマは何でも乗れればいい、今はハイブリッドカーがお得なんだと単純に考えると、トータルコストで損することも多く出てきます。
他にもこういう人にはハイブリッドカーをおすすめしない
高速で長距離走行がメインで使われる方にもハイブリッドカーはおすすめできません。
先代のモデルは時速73キロ、現在のモデルは時速100キロを超えると、モーターのみで走るハイブリッドの燃費を伸ばす走行ができなくなり自動的にエンジンが掛かります。
そうなってしまえば、ハイブリッドもそうでないクルマも燃費はそう変わりません。また、ハイブリッド車にはとても重い「電池」が積まれます。ニッケル水素のものだと200kgほどです。
これを乗せたまま走るということは、200キロの荷車を引いているのと同じことです。さらに車両が重いということはタイヤの減りも早くなるので、タイヤ交換サイクルも短くなります。
自分にとって最良の自動車選びを
今はガソリンエンジン車の燃費性能もどんどん良くなりました。さらに「クリーンディーゼル」という燃費もいい、安い、ガソリンも軽油なのでランニングコストも低いクルマも多く出ています。
絶対ハイブリッドがいいという人以外は、実際に今回ご紹介した方法で計算してみて、自分にとって一番のエコカーを見つけてみてください。
自動車メーカーの中でもハイブリッド神話は、既に崩れかかってきています。新しい技術がどんどんと生まれ、電気とガソリンの融合の時代はそろそろ終わりに近づくのかもしれません。クルマの選び方はそれぞれですが、一つの指標として、総コストというものを見つめてみてもいいのではないでしょうか。