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アルミ(ジュラルミン)製ホイールナットを日常使用することの危険性
愛車をドレスアップするときに外せないのがホイール交換です。
しかし高価でスタイリッシュなホイールに交換しても安っぽいナットのままでは興ざめしてしまいます。
そこで気になるのがアルミ(ジュラルミン)製ホイールナットの存在です。
黒染めかクロームメッキしか選べない鉄ナットと違って、アルミ製ナットはカラフルなアルマイトや形状が揃っていてドレスアップ派に魅力的なアイテムです。
しかしアルミ製ナットの危険性を理解しておかないと、思わぬ事故を引き起こしてしまうかもしれません。
出典:http://www.esetuning.com/
なぜホイールナットをアルミにするのか
ホイールナットはホイールを車に固定する重要部品です。走行中にホイールナットが緩んだり外れたりしたら大事故に繋がるので信用できないものに替えたくないはずです。
しかし多くの人が「レーシングナット」とよばれるアルミ(ジュラルミン)製ホイールナットに交換しています。彼らはなぜホイールナットを鉄からアルミに替えるのでしょうか。
軽量化のため
脚周り(バネ下)の軽量化は他の部分の10倍の効果があるといわれています。
そのため走りにこだわる人は軽量なアルミホイールに交換しますが、同時にホイールナットもアルミ製に替えて更なる軽量化を狙います。
ドレスアップのため
通常の鉄製ホイールナットは黒や銀色メッキしかないので没個性になりがちです。
アルミ製のレーシングナットはアルマイト処理によって様々なカラーが用意されており、固定的なドレスアップアイテムとして人気です。
アルミ製レーシングナットには様々な形状や長さがありホイールからはみ出るロングナットが好まれているようです。最近は先が尖ったレーシングナットを装着する輩が発生して社会問題になっています。
アルミ製ホイールナットの危険性・デメリット
アルミは鉄の重さの1/3しかないので、軽量化を図るときに鉄からアルミに材料置換する方法はよく知られています。
しかし重量だけでなく、強度も鉄の1/3です。
したがって強度を落とさずに鉄からアルミに材料置換するにはアルミの厚みを3倍にする必要があり、軽量化と強度を両立させることは不可能です。
アルミ製のレーシングナットを見てみると鉄ナットと厚みが同じです。中には薄いものもあります。そもそもアルミ製レーシングナットは軽量を謳い文句にしているので、鉄ナットより厚みを持たせることはあり得ないでしょう。
ということは単純に考えてアルミ製レーシングナットの強度は鉄ナットの1/3しかないことが分かります。
高級アルミ製レーシングナットで超々ジュラルミンを使ったものがありますが、アルミの中で最高強度であっても鉄の強度には遥かにおよびません。
アルミ製レーシングナットは頻繁な脱着に向かない
アルミをヤスリ掛けするとすぐに削れてしまいます。アルミは思った以上に柔らかい素材なのです。
車のハブボルトは鉄でできています。鉄より柔らかいアルミ製レーシングナットの脱着を繰り返すと、ネジ山が減ったりつぶれたりして固定力が弱くなっていきます。
アルミ製レーシングナットを数回脱着しただけでホイールとの接触面に「かじり」を起こすことがあります。かじりを起こしたナットは本来の締結力を得られないだけでなく、緩みやすくなってしまいとても危険です。
レーシングナットなのにスポーツ走行に不向きな理由
金属は温度によって体積が変化します。熱くなると膨張しますが、アルミは鉄よりも熱膨張率が高いという特徴があります。
車の中でもブレーキは高温になる部分です。特にサーキットなどでスポーツ走行するとブレーキ周辺は非常に高温になってしまいます。
当然ながらホイールナットもブレーキの熱を受けやすく、熱膨張率が高いアルミ製ナットを使っていればその影響がより強く現れてしまいます。
レーシングナットはデメリットだらけなドレスアップパーツ
レーシングナットで得られる軽量化の効果はせいぜい数百グラム程度です。我々のようなアマチュアドライバー+一般乗用車の世界で、果たしてこの程度の軽量化の恩恵を受けることが可能でしょうか。
その反面、アルミ製レーシングナットを装着することで様々なデメリットを背負うことになります。
そもそも車とホイールを固定するための最重要部品であるホイールナットを、わずかな軽量化やドレスアップ目的で強度ダウンさせること自体が「やってはいけないこと」なのです。
ちなみに本物のレーシングカーに「アルミ製レーシングナット」は使われていません。鉄製ホイールナットの使用が常識です。間違った情報やメーカーの謳い文句に踊らされないようにしましょう。
オークションなどでカラフルなアルミ製ホイールナットが発売されています。しかも安価なものが多いので思わず飛びつき買いしてしまう人もいるかもしれません。しかしアルミ製ホイールナットの怖さを知れば知るほど交換はできないはずです。事故を起こして後悔したくなければ安易に手を出すべきではありません。